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山下 哲也/YAMASHITA Tetsuya
Parisより、愛をこめて

1973年東京都生まれ。2002年渡仏。
世界で最も由緒ある老舗カフェ、パリ6区サンジェルマン=デ=プレの、
カフェ・ド・フロールのギャルソン。
フランス文化の継承者・伝道師として生きる。





新年の抱負 あるいは己自身である自由

新年明けましておめでとうございます。

幼い頃、毎年元旦の食卓の席で父親に新年の抱負を問われていたことを、ふと思い出した。

そんな寝正月を過ごしながら、本年は改めて、新年の抱負を述べてみたい気持ちに駆られた。

暖かいアルパカのブランケットに包まれながら、大好きなドラクロワの作品集を眺めていたら、心が熱くなった。

La liberté d`être soi

訳すると、己自身である自由、とでもいうのでしょうか。

自分自身であり続けることは難しい。己の理想を追求し、周囲とのズレを否応無く痛感させられた旧年だった。

でも、己自身であることをやめることは僕には出来ない。なぜなら、自分に忠実であることは時に辛いこともあるけど、本来は歓びであるはずだから。

我が家からも徒歩10分のサン=シュルピス教会の天使の間に描かれている『天使とヤコブの格闘』ほど勇気づけられる絵もない。

人生、そして創造とは如何なるものであるか。

畏友・平野啓一郎さんの『葬送』のなかでドラクロワの言葉として語られている。

“  その何もない白の巨大な一面。そこでこそ自分の残りの人生の大半が費やされ、しかも作品として形象化してゆくということの不思議。・・・・・・ 創作の意欲は、今彼にとって新鮮であった。それは最も透徹した画家としての意識が、住み慣れた洞窟の壁画に自らの存在を初めて刻みつけようと思い立った古代人のような切実さによって鼓舞され、勇気づけられている力強い昂揚であった。

彼はその壁いっぱいに、先日来絶えず幻視されている或る一つの光景を描き出した。それは、《旧約聖書》の「創世記」第三十二章に見られる天使とヤコブの格闘の主題であった。夜の暗がりの中で人知れず聖なる力と戦い続け、神と人に打ち勝ち、祝福を受けたヤコブ。人間の己を超えた力との不屈の戦い。しかもその勝利は、この世界で、この肉体を以てこそ収められるべきもの筈であった。⏤ 緑を戴き、雄々しく屹立する木々の狭間で、組み合った肉体は力強く眩しかった。それは決して孤独と苦悩との厳めしいまでに巨大な顕現であってはならなかった。描ききった画家を悔悟のような深い悲しみの底へと沈めるものではなく、彼の生そのものを朝日のように祝福するものでなければならなかった。創作すること自体が讃歌のように高らかに歌われる作品。彼という人間の供犠を必要としない、歓喜に満ちた晴れやかな作品。・・・・・・ ”

己の天性を完全に実現したいと思います。

Parisより、愛をこめて


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