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山下 哲也/YAMASHITA Tetsuya
Parisより、愛をこめて

1973年東京都生まれ。2002年渡仏。
世界で最も由緒ある老舗カフェ、パリ6区サンジェルマン=デ=プレの、
カフェ・ド・フロールのギャルソン。
フランス文化の継承者・伝道師として生きる。




月別アーカイブ: 2月 2013

情熱のギャルソン

「カフェのギャルソンになったきっかけは何ですか?」という質問を良くされる。

正直「きっかけ」ってそんなに大事なものなのでしょうか?と尋ねられる度に困惑してしまう。

なぜなら、それはある種残酷な物語であるから。

僕は小・中・高校とずっとサッカーに熱中していた。プロを夢見ていたし、エスカレーター式に進学した高校3年生の時には超名門進学校(と自分で言うのはバカらしいけど)のくせに、都大会決勝まで勝ち進んだ。個人的にも、地区選抜選手に選出されていた。

でも、ある日を境に僕はサッカーを諦めた。
あの夏、自分より2歳年下の彼のプレーをテレビで見た瞬間に、鳥肌が立って感動して興奮すると同時に、敗北感を味わった。「いくら努力しても彼の様にはプレー出来ない。」

その日から僕は漠然と別の何かを探し求めた。

自らの情熱のすべてを捧げるに値するものを。
そしてそれはスポーツと同様に、自らの腕一本、肉体一つで勝負出来るもの、またGKというポジションと同様に、ヒリヒリするほどの孤独感を得られるものでなければならなかった。
そして、これだったら世界で勝てると信じられるものを。

これが僕にとってのカフェのギャルソンをしている「きっかけ」です。

結局は、気持ちなんだと思う。次々と見せつけられる実力の差やセンスの壁に、それでも挫けずにその行為をやり続けるに値する、自分のなかの必然。それがあるか、ないか。その気持ちだけが、その必然に支えられた情熱こそが、絶え間なく技術を支え、センスを磨き、実力を蓄えてくれる。また、それらの裏付けがあるからこそ、さらに情熱を持って長くやり続けられる。
つまり、それが才能というものだと思う。

 

自分はどうありたいか。何を表したいのか。何を、どう伝えたいのか。それを真摯に見極め、追求していく気持ちの強さ。

どんな状況になろうと、伝えたい世界がある。表現したい相手がいる。そして、その気持ちに忠実であり続けたい自分がいる。

それがあるかぎり、僕は永遠のギャルソンです。

Parisより、愛をこめて。

 


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